【音声データの録音】
以前の検証ではIP電話から携帯電話に電話し、それを録音するものでした。
<スマホでIP電話「各社の音質比較」編 (Part1)>
これだと、携帯電話側の音質の影響を受けていたため、クリアな音質で録音できていませんでした。
(IP電話側で指定したコーデックに圧縮後、携帯電話用[AMR-NB]に再圧縮される。)
そこで「FUSION IP-Phone SMART」の留守電で録音される音声が非常にキレイな音質であることに着目し、これで音声を録音し比較することにしました。
(FUSIONの留守電データは 128kbps RIFF-WAVE です。)
【遅延時間の計測】
遅延時間は、Part1のときと全く同じ方法で計測しています。
「IP電話で音声データを発信してから、携帯電話でそれを受信する」までのタイムラグの測定です。
なお、携帯電話同士でも200ms程度は遅延するため、IP電話単体の遅延時間を知りたい場合は、この測定した遅延時間から100msを引いた値が本来の値となります。
ただし、ここでは実用的なデータを載せたいため、「IP電話→携帯電話」の遅延時間をそのまま掲載しています。
また、今回は光回線による遅延時間の測定しか行なっておりません。
この理由は、LTE接続や3G接続の場合は、光回線との「応答速度(Ping値)の差分だけ多く遅延する」だけだからです。
これは何回か検証を繰り返すうちわかりました。
今回の検証におけるPing値は概ね下記のとおりでした。
例えばこの場合、LTE接続での遅延時間は、光回線で測定した遅延時間に“60ms”(80ms-20ms)を足すだけで簡単に算出できます。同様に3Gの場合は“110ms”(130ms-20ms)を足すだけです。
遅延時間に関してはこの算出方法で求めたほうが、実測値より確実になります。
なお、実測値による測定結果を知りたい場合は<Part1>で検証していますので、参考にしてください。
【各IP電話の音質及び遅延時間】
<音声の元データ>
IP電話 サービス |
SIP クライアント |
音声コーデック | 音声データ | 遅延時間 |
050plus | 純正アプリ | G.729a | 415ms | |
G-Call050 | CSipSimple | G.711u(PCMu) | 328ms | |
SILK(24kHz) | 374ms | |||
SILK(8kHz) | 392ms | |||
GSM | 363ms | |||
G.729a | 395ms | |||
Acrobits Softphone |
G.711u(PCMu) | 412ms | ||
G.729a | 606ms | |||
純正アプリ | 品質「高」 | 445ms | ||
品質「低」 | 451ms | |||
FUSION IP-Phone SMART |
CSipSimple | G.711u(PCMu) | 468ms | |
G.722 | 493ms | |||
Speex(8kHz) | 541ms | |||
iLBC | 491ms | |||
GSM | 451ms | |||
Acrobits Softphone |
G.711u(PCMu) | 478ms |
【検証結果と考察】
実は、この検証を最後に「050plus」は解約するつもりでした。しかし、今回の結果をみて、思いとどまってしまいました。
これは、音声データを聞いて頂ければわかることなのですが、正直言って音質は悪いです。ですが、ノイズもなく聞き取りやすい音質なのです。
これがこの検証を経て一番最初に思ったことです。
さて、詳細に入ります。
まず、「050plus」の音声コーデックは「G.729a」が使われています。
実は、これは「G-Call050」も対応しており、この両者を比較した場合、音質は明らかに「050plus」の方が明瞭です。
これは「050plus」のアプリが非常に優れているためです。
「050plus」は原則として自社製アプリでのみ動作します。そのため、そのアプリは「050plus」のみに最適化すればよく、他のIP電話サービスのことなど考える必要はありません。
つまり、確実に「050plus」に最適化されたアプリに仕上がっています。
一方「G-Call050」で使用したアプリは、「G-Call050」以外にも多種多様のSIPに対応する必要があります。
そのため、アプリの設定のよる最適化はユーザ側に委ねられています。
私は本検証に際し「CSipSimple」を「G-Call050」用に最適化していません。
これが、この音質の差に繋がったと思われます。
「CSipSimple」の詳細設定をもう少し煮詰めていけば、「G-Call050」の音質はもっと良くなるかと思います。
しかしそれを考えると、何も考えずに使える「050plus」は素晴らしいの一言です。
・・・と、ここまで「050plus」をべた褒めしましたが、結局電話としての性能は「G-Call050」に分があります。
会話のしやすさに関しては、音質よりも遅延時間で、しかも音声コーデックに「SILK」が選べる「G-Call050」は文句のつけようがありません。
さて、各IP電話を横並びで比較すると、やはり遅延時間に差が出ています。
また、遅延時間は音声コーデックよりも、アプリやIP電話のサービス自体に大きく依存します。
アプリによる遅延は「G-Call050」の「CSipSimple」と「Acrobits」とを比較すると明らかです。
IP電話サービスによる遅延は「G-Call050」と「FUSION IP-Phone SMART」とを比較すると明らかです。
【まとめ】
[G-Call050]
IP電話としての性能を追求するならば、圧倒的に「G-Call050」がお勧めです。
「G-Call050」と「CSipSimple」の組み合わせは、他のサービスを大きく引き離しています。
私は、固定電話にかけるときは3G回線(LTEでない)でも、「G-Call050」と「CSipSimple」の組み合わせをメインに使用しています。
これで全く違和感なく電話できています。
(ケータイを解約したい衝動に駆られるぐらいです。)
ここまで「CSipSimple」を前提に言っていましたが、もちろん純正アプリでも問題ありません。
「G-Call050」は純正アプリを使用した場合においても、音質と遅延時間、及び「お手軽さ」のバランスが良くお勧めです。
まずは3ヶ月間の無料期間の間だけでも、試してみる価値は十分にあると思います。
[050plus]
まずは何と言っても、「ゼロ・ゴー・ゼロ・プラスへおつなぎします」のガイダンスが特徴的です。
「050plus」で電話を受信した場合、相手方には必ずこのガイダンスが流れます。
これが許せるのであれば、「050plus」は非常にお勧めです。
ふざけているわけではなく、ポイントは本当にこの“ガイダンス”かと思います。
以前紹介しましたが、私の母はこの“ガイダンス”を聞いて、留守電と勘違いして電話を切っていました(^_^;)
最後になりましたが、IP電話としての機能は申し分ありません。
音質もまずまずで遅延も少ない、そして何も考えずに使えます。
[FUSION IP-Phone SMART]
これは使う人を選びます。
万人におすすめできるIP電話ではありません。
音質はキレイです。しかし遅延時間が大きすぎます。
これでは会話にかなりの違和感を覚えるはずです。
多分、いつもどおりには会話できないと思います。
「FUSION IP-Phone SMART」を使った場合は、電話の相手も「この電話は遅延する」という理解が必要になります。
遅延を理解した上で利用できるような環境(友人同士など)であれば、特に問題はないと思います。
また、「FUSION IP-Phone SMART」は月額は無料なのですが、通話料が高く、発信には向いていません。
しかし、私のように何かの検証(録音)で使用したり、留守電専用として割り切る分には良いIP電話かと思います。
IP電話毎に個別に記事も書いています。これらも参考にして頂けたらと思います。
<スマホでIP電話「G-Call050」のすすめ>
<スマホでIP電話「050plus」のすすめ>
<「G-Call050」+「CSipSimple」=「最良のIP電話」>
<スマホでIP電話「各社の音質比較」編>
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