しかし、「BIGLOBEフォン」に関する情報は極端に少なく、使ってみたくてもどの程度の音質なのかまったくわからない状況です。
そこで、「BIGLOBEフォン」を実際に契約して、その性能を検証してみました。
[BIGLOBEフォンについて]
ここで紹介するサービスは正式名称「BIGLOBEフォン・モバイル」です。
「BIGLOBEフォン」と「BIGLOBEフォン・モバイル」とでは異なるサービスなのですが、わかりにくいため「BIGLOBEフォン」で呼び方を統一します。
(本当の「BIGLOBEフォン」は固定電話向けのサービスです。)
「BIGLOBEフォン」はBIGLOBEを契約しているユーザのみ使うことのできる「IP電話サービス」になります。
これは、固定電話として使うものではなく、スマホのアプリとして使います。
したがって、外出時も使えることになります。
料金は以下のとおりで、有名な「050plus」と同一料金です。
― | 基本料金 | 固定電話宛 | 携帯電話宛 |
BIGLOBEフォン | 315円 | 8.4円/3分 | 16.8円/1分 |
携帯電話(参考) | ― | 126円/3分 | 42円/1分 |
アプリは「ナムザック・ジャパン」という会社が作成しています。
(独自にUrekaBizというIP電話サービスも提供しているみたいです。)
[BIGLOBEフォン専用アプリ]
このアプリはインストールする機種によって、最適な通話環境を自動的に設定してくれます。
また、通信状態によって最適なコーデックも自動的に選択してくれます。
なお、使用されるコーデックは使用環境により、次の2つから選択されます。
2つとも優秀なコーデックで、特にAMRはドコモのケータイでも使われている非常に優れたコーデックになります。
3GとWi-Fiの切り替わりも、もたつきがなく非常に優秀です。
また、プッシュ対応ではないものの、バッテリーの減り具合も気になるほどではありませんでした。
ここまでは文句なしのアプリに仕上がっています。
[音質と遅延の検証]
ここまで凝った作りの「BIGLOBEフォン」です。その音質にも期待が持てます。
検証はいつもどおり、「自分がどう聞こえるか」ではなく、「相手がどのように聞こえているか」と「遅延時間」になります。
以下に、実際に録音した音声データを一覧にします。
(夜中に録音している関係上、音量は小さめです。)
<音声の元データ>
<BIGLOBEフォン音質検証>
機種 | 回線種別 | 音声データ | 遅延(ms) |
iPhone4s (iOS) |
Wi-Fi(KDDI光) | 337 | |
ドコモ | 322 | ||
MVNO(BIGLOBE) | 361 | ||
P-06D (Android) |
Wi-Fi(KDDI光) | 計測不可 | |
ドコモ | |||
MVNO(BIGLOBE) | |||
L-01F (Android) |
Wi-Fi(KDDI光) | ||
ドコモ | |||
MVNO(BIGLOBE) |
[考察]
まず、iPhone版の「BIGLOBEフォン」はなかなかに優秀で、無音状態を的確に判断し完璧なノイズ除去(無音にする)が行われています。
しかし、環境音を除去するノイズフィルタは搭載されていないのか、無音時と音声検出時の差が目立ちます。
(この検証はエアコンをかけた室内で行っており、僅かながらエアコンの風の音が常時していました。)
このため、聞き取りやすい音質ではありますが、クリア感は失われている印象です。
次にAndroid機の音質です。
最初、録音に失敗したのかと思い、何度か条件を変えて録音を試みたのですが、ダメでした。酷いノイズです。
機種固有の問題を疑い、他機種でも試してみましたが、多少マシにはなったものの結果は変わらずでした。
遅延時間は(iPhone版しか計れませんでしたが)MVNO回線を使っても300ms台に収まっており、非常に優秀です。
なお、Android版はノイズが酷く、遅延時間の計測はできませんでした。
[まとめ]
「BIGLOBEフォン」はコーデックの選定は素晴らしいのですが、アプリの出来がイマイチです。
符号化方法や遅延速度から推測すると、SIPサーバの性能はかなり良いのではないかと思われます。
それだけに、専用アプリがネックになってしまうとは、非常に残念な結果です。
これであれば、専用アプリでも使いやすく音質も良い「050plus」をお勧めします。
<スマホでIP電話「050plus」のすすめ>
または、(050plusに比べると若干難易度は上がりますが)最高音質・超低遅延の「G-Call050」をお勧めします。
<スマホでIP電話「G-Call050」のすすめ>
[希望]
「BIGLOBEフォン」は、SIP情報の取得ができれば、IP電話最強の座を奪えるポテンシャルを秘めています。
もし、SIP情報が抜けた、という人がいましたらぜひ教えてください。
なお、SIP情報はこのファイルに書かれていると思うのですが、私には解読できませんでした・・・。
[properties.xml]
Authentication:LastUserID
Authentication:LastPassword
Authentication:LastSuccessfulUserID
Authentication:LastSuccessfulPassword
はじめまして。スマートフォンにおけるip電話の実用性を調べており、wert様のブログにいきつきました。wert様のip電話へのご愛情ならびに膨大な実証実験に感嘆いたしました。
返信削除本日は、ご質問がございましてコメントを書かせて頂きました。
お時間がございましたらお答えいただけると幸いです。
現在wert様のサイトを参考にし、iphone4s・fusion・acrobitsの環境でip電話を試しています。
wifi環境では携帯電話レベルで使用できましたが、3gだと遅延を意識してしまい、環境の向上を測るべくLTE環境のiphone5への乗り換えを考えております。
iphone5のLTE速度は、平均DL25Mbps,UP10Mbpsでwifi並みの速度がでるので、遅延を感じずに使うことができると期待しています。
しかしながら、wert様のブログによると、BIGLOBEフォンは3G環境なのにも関わらず、遅延が400msを切っております。これはなぜなのでしょうか。
他の実験だと概ね3G環境だと500ms以上は確実にあり、BIGLOBEフォン環境においてのみ遅延が著しく低く感じました。これは通信速度の速さ=遅延の少なさとは一概にいえないということでしょうか。
また、別の実験において、LTEの遅延が3gよりも遅く600ms以上計測していたと思うのですが、こちらの理由も合わせて教えていだければ幸いです。
お忙しい中、失礼いたしました。
diangelodayoさん
削除コメントありがとうございます。
これほどまでに良く読んで頂き感謝です!
>iphone5のLTE速度は、平均DL25Mbps,UP10Mbpsでwifi並みの速度がでるので、遅延を感じずに使うことができると期待しています。
diangelodayoさんはご存知かと思いますが、遅延時間に直結するのは応答速度(Ping)です。
使用するコーデックにもよりますが、通信速度はDL/UPともに100kbps程度あれば、それ以上はどんなに速度が出ようとも変わらない品質となります。
そのため、iPhone5のLTEに変えてもどこまで遅延が改善するかはわかりません。
なお、LTEで「速い」と言われているのはauです。ドコモのLTE接続はPing100ms弱程度ですので、Wi-Fi(光)に比べると随分遅いです。
>しかしながら、wert様のブログによると、BIGLOBEフォンは3G環境なのにも関わらず、遅延が400msを切っております。これはなぜなのでしょうか。
はい。これは速いですね。
これには私も疑問を抱き、コーデックの設定が変わったのではないかと、ログ情報を見てみました。
しかし、3計測とも全く同じ設定でつながっていました。
ということでこれは、SIPサーバ(BIGLOBEの自社サーバが使われています)までの経路の問題と結論づけています。
BIGLOBEのSIMが予想以上に早い理由もこれかなぁ、と思っています。
もちろんこれに、不確定要素(無線通信の安定度等)がプラスされます。
ただ、BIGLOBEは元々から、かなり良好なPing値を示していたので、自社サーバでなくともIP電話用途に優れているものと思っています。
多分、複数回計測すれば、ある一定の数値に収束していくのでしょうが、そこまでの検証は行っておりません。
>BIGLOBEフォン環境においてのみ遅延が著しく低く感じました。
これは私も感じています。
そのため、本文中にも書いた「IP電話最強の座を奪えるポテンシャルを秘めています」がこの所以です。
これを検証するためには、他アプリでの検証が必要になるため、SIP情報抜きをチャレンジしましたが撃沈です・・・。
検証したいです・・・(>_<)
>これは通信速度の速さ=遅延の少なさとは一概にいえないということでしょうか。
これは前述のとおり、通信速度は一切関係しません。
ある一定以上の通信速度さえ確保できれば、あとは応答速度のみが影響します。
ただし、バックグラウンドで何か通信が行われることを勘案すると、通信速度は速いに越したことはありません。
>別の実験において、LTEの遅延が3gよりも遅く600ms以上計測していたと思うのですが、こちらの理由も合わせて教えていだければ幸いです。
これは、通信環境によるタイミングです。
LTEより3Gのが速いというわけではなく、実証データがこうなってしまっただけです。
3G通信もLTE通信も測定の都度、応答速度が変わりました。
これは無線通信の規格上、安定した通信は不可能なためこのようになります。
何度もスピードテストを行っていると、LTEと3G接続とで応答速度が逆転する場合すらありました。
これは「たまに起こる」ではなく「たびたび起こる」ぐらいの感覚です。
そのぐらい無線通信は不安定です。
(キャリア通話はQoSに乗っかっているため、無線通信でも比較的安定します。)
wert様
返信削除ご返信有難うございます。
お話をうけて私もPing値の高いエリアで実験してみました。
本日NTTDocomo,LTE,UP6M,DL1M,Ping値40,050PLUSという環境です。
結果ですが、遅延が多少気になるくらいでプライベート利用だと十分実用できるレベルでした。少なくとも待ち合わせ等の短い会話なら全く問題がありません。
UP,DLは平凡な値なので、PING値が遅延に影響があるというのは間違いないということを実感できました。
ただ携帯電話をデータ回線のip電話のみで使用するというのは以下の点から見送ろうと思いました。
1、ビジネスにおいてはその少しの遅延が、印象を左右する可能性がある。
2、サービスとして黎明期なので、いつサービスが終了するかわからないor値段改定があるかもしれないといった問題があり、携帯電話のように1つの電話番号を半永久的に使うには時期尚早と感じた。
というわけで当面は、携帯電話と平行して2年ほど様子を見ていこうと思います。
この度はご相談にのっていただきありがとうございました。