2015年8月13日木曜日

SIPクライアント(AndroidのIP電話アプリ)の比較

今まで色々なSIPクライアントを試してきました。
しかし、1年前と今とで、それらがすべて同じ音質とは限りません。

例えば、1年前は音質の悪かった「AGEphone」ですが、もしかしたら今は超高音質になっているかもしれません。




そこで、あらためて各IP電話アプリを再度検証してみたいと思います。
今回は音質の録音はせずに、すべて主観で意見を述べたいと思います。



【 結果一覧 】

以下に検証したSIPクライアントの音質や遅延などの結果を一覧にしました。
なお、検証したスマホは「Galaxy S6」です。

SIPクライアント名称 音質 遅延 使い勝手 複数
アカウント
CSipSimple
GroundWire
ZoiPer 3(5+)
Bria 5+
MizuDroid 5+ 5+ ×
Sipdroid 2(※)
Grandstream Wave 3(※)
AdoreSoftphone 4(※) ×
LinphoneUbiPhone含む)
Media5-fone ×
AGEphone 3(5+) ×
Zadarma SIP 不明 不明 不明 不明

1:非常に悪い  2:悪い  3:普通  4:良い  5:非常に良い
※ ←これが付いているところは長期に渡る検証は未実施。



【 各SIPクライアントの感想 】

◆ CSipSimple

音質:3
遅延:3
使い勝手:5
複数アカウントの同時登録:可能

<備考>
すべてをそつなくこなす。
さらに、不可能がないぐらいの詳細設定が可能。
しかし、ここまで何でも出来るなら、周囲の雑音を消すようなノイズリダクション機能も欲しかった。
音質・遅延ともに同種のアプリではまずまず良い方。



◆ GroundWire

音質:4
遅延:5
使い勝手:4
複数アカウントの同時登録:可能

<備考>
Acrobits製の高級アプリ。Acrobits製品ならではのプッシュ着信が可能。
ただし、Wi-Fi通信の時は長期のプッシュに失敗するため、Wi-Fi接続時はバックグラウンドで動作させる必要がある。
だが、バックグラウンドで動作させるにはバッテリーの消耗が早すぎるため、実用的ではない。
3G/LTE専用と割り切って使うのが吉。



◆ ZoiPer

音質:3(5+)
遅延:4
使い勝手:5
複数アカウントの同時登録:可能

<備考>
使い勝手の良さは絶品。
Asteriskで自分でサーバを構築している場合は、IAX2を使うとなお良い。
唯一、IAXに対応したクライアントであり、これが非常に便利。
IAXを使えばNAT越えに悩む必要がなくなり、公衆無線LANにおいてもNATを気にせず良好な通話が実現できる。

自分から相手への音質はまずまず良い。特筆すべきは相手から自分への音声であり、これが非常に明瞭で聴きやすい。
なお、オートゲインコントロールとエコーキャンセルは、切って使ったほうが音質が向上する。



◆ Bria

音質:3
遅延:3
使い勝手:5
複数アカウントの同時登録:可能

<備考>
音質・遅延ともに普通。ただ、使い勝手だけは最高に良い。
NAT越えの設定に関しても親切。
NATを越えられる設定が自分でわからない場合においては、テスト通話後Briaが自動で選択してくれる。

また、現在接続している環境に合わせて、自動的にアカウントが選択される。
例えば、Groundwireであれば発信の都度、使用アカウントを選択するのだが、Briaは違う。
その接続では発信できないものは最初から除外される。
これは3G/LTEとWi-Fiとを切り替えた際に非常に使い勝手が良いものとなる。

初心者向きのSIPクライアントで使いやすい反面、コアなユーザには物足りないかもしれない。



◆ MizuDroid

音質:5+
遅延:5+
使い勝手:1
複数アカウントの同時登録:不可

<備考>
最高の音質と、とんでもないまでの低遅延が売り。
ほとんどが「Auto」設定で問題なく使える。さらに「Auto」が気に食わなければ、きめ細かいマニュアル設定も可能。

・・・と最強に思えるSIPクライアントであるが、約1時間で着信不能となる。
これはNATテーブルやレジスト頻度の問題ではなく、あまりにも優先度が低く設計されたアプリであるため、Android側にタスクが切られてしまうのが原因に思える。
ユーザ側で優先度を上げる方法はないので、Taskerなどで一定時間ごとにMizuDroidを呼び出すなどして、Bulletproofする必要がある。

これほどまでに超高品質でありながら、使い勝手は最悪という非常にもったいないアプリ。



◆ Sipdroid

音質:3
遅延:4
使い勝手:2
複数アカウントの同時登録:可能

<備考>
音質もなかなか良く、遅延はかなり少ない。
「通話」に特化したアプリで、電話帳や履歴はAndroid側のものを用いるという割り切った仕様。
音質は悪くないのだがNAT越えの設定がないため、環境によってはNATを越えられないかもしれない。



◆ Grandstream Wave

音質:3
遅延:3
使い勝手:3
複数アカウントの同時登録:可能

<備考>
複数同時通話や着信転送などもできたりと、かなり多機能。
一般的な多機能電話機に搭載されているような機能は、すべて網羅しているのではないだろうか。



◆ AdoreSoftphone

音質:4
遅延:4
使い勝手:4
複数アカウントの同時登録:不可

<備考>
ほとんど設定する項目がないのが特徴。
何も設定していなくても音質・遅延ともに最高のスペックとなっている。



◆ LinphoneUbiPhone含む)

音質:5
遅延:5
使い勝手:2
複数アカウントの同時登録:可能

<備考>
LinphoneとUbiPhoneは同じと考えて良い。UbiPhoneはLinphoneのサービスを使って動いている。
エコーキャンセラーが便利。自らビープ音を出して最適な数値を見出している模様。
なお、通話品質においては音質・遅延ともに最高ランク。

しかし、不在着信や履歴などはAndroid本体とは同期しないにもかかわらず、Linphoneの同機能はアプリを開かないと使えないため、不在着信に気づけない。
さらにLinphone内の発着信履歴を見ても、電話番号に「@アドレス」が付加されているため、電話帳から名前が取得できていない。
また、アカウントを切り替える際はいちいち設定画面まで開かなければならず、使い勝手はかなり悪い。



◆ Media5-fone

音質:3
遅延:4
使い勝手:3
複数アカウントの同時登録:不可

<備考>
遅延時間は優秀。
また、ノイズキャンセラーも優秀。
ある程度ノイズが多い場所、例えば駅構内などで使う分には悪くない。
しかし、待受だけでもバッテリーの消耗が早く、若干の使いづらさを感じる。



◆ AGEphone

音質:2
遅延:2
使い勝手:3(5+)
複数アカウントの同時登録:不可

<備考>
音質・遅延ともに悪い。またバッテリーの消耗も早い。
悪いとは言ってもあくまでも「ほかと比べて」であり、単体で見れば優良なアプリではある。

特筆すべきは、全アプリ中で唯一、「AsteriskサーバがNAT背後」さらに「端末もNAT背後」という壁だらけの状態でも正常な通話ができた。
どういう技術を使っているのかはわからない・・・。
本来、そう簡単には解決できない組み合わせのはずなのだが、AGEphoneはいとも簡単にNATを通過した。

このような特殊な環境下においては、AGEphoneが最強かもしれない。



◆ Zadarma SIP
音質:不明
遅延:不明
使い勝手:不明
複数アカウントの同時登録:不明

<備考>
Google Playで高点数なので使ってみたいのだが、必ずインストールに失敗する。(Galaxy S6)
ロリポップ未対応とは思えないのだが・・・。
次回のアプデートに期待する。



【 まとめ 】

色々なアプリで「比較をすれば」、ほとんどのアプリが、1年前と同じ印象です。
しかし、個々のアプリの音質は1年前と比べ、全体的に底上げされていました。

例えば、最初に例としてあげた「AGEphone」ですが、全体で見れば確かに音質は悪いのです。
しかしながら、もし1年前でこの音質であれば最高クラス・・・とまでは行きませんが、かなり高音質な部類に属したでしょう。

このように、各SIPクライアントは着々と音質が上がっていっています。
また、新規参入しているアプリも幾つかあり、今後がとても楽しみです。

VoIPは、通信の品質が上がれば上がるほど高音質となるので、スマホの進歩と同時にさらに発展していくはずです。
また1年後ぐらいに、今回と同じような検証をして一喜一憂できれば良いな、なんて思っています。
    

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