すべてのIP電話(VoIP)において重要なことは、「自分の声が相手にどのように届くか」です。
理由はここでは述べませんが、これさえ気にしていれば問題ありません。
しかし、自分がIP電話を使うのですから、気にしたくてもできません。(自分の声は相手しか聞けない。)
そこで、IP電話の音が相手にどのように聞こえているのかを検証しました。
使用した音声データは「声優のナレーション」サイトのサンプル音声を拝借しました。
(良サンプルの提供ありがとうございます。)
まず、通話の録音は実際の使用状況を考慮して次のとおり行いました。
PCのスピーカから音声出力
(人が話した声とみなす)
↓
発信用スマホのマイクで集音
(IP電話が拾う音)
↓
受信用スマホで録音
(相手に聞こえる声)
これで環境ノイズも拾えるため、実際の使用環境に近くなります。
なお、相手から届く音質については検証していません。
これは、「相手から聞こえる音が悪い」という例を全く見ないためです。(劣悪な通信状態を除く)
[測定条件]
接続方法 | 帯域(Mbps) | Ping (ms) |
使用端末 | ||
DL | UP | ||||
光回線(KDDI) | Wi-Fi | 27.12 | 28.14 | 17 | P-06D→SH-07D |
3G(LTE) | Wi-Fi | 7.66 | 2.33 | 134 | P-06D→SH-07D |
3G | 直接 | 4.62 | 0.40 | 210 | P-06D→SH-07D |
ドコモ携帯電話(参考) | ― | ― | ― | ― | F-08D→SH-07D |
※ 何度か速度計測を行い、値がブレないことを確認しています。
各アプリの設定は次のとおりです。
[音声コーデック:G.729a]
(1)接続品質「高」
(2)接続品質「低」
[音声コーデック:不明(※)]
※ サポートに問い合わせたが、教えられないとのこと。
[音声コーデック:G.711u]
次に、遅延時間の計測です。
スピーカから出力される音声を、ネットワークを通じて聞こえるものと、ダイレクトに聞こえるものとをミックスして録音しました。
遅延時間は、その音声データの波形から解析しています。
以下に、実際に録音した音声データと、その時の遅延時間を一覧にします。
(夜中に録音している関係上、音量は小さめに調整しています。)
<音声の元データ>
<音声データ・遅延時間>
回線種別 | 各サービス | 音声データ | 遅延(ms) | |
携帯電話 | NTTドコモ | 212 | ||
光回線 | 050plus | 415 | ||
G-Call050 | 品質「高」 | 422 | ||
品質「低」 | 403 | |||
FUSION IP-Phone SMART | 432 | |||
3G(LTE) | 050plus | 474 | ||
G-Call050 | 品質「高」 | 583 | ||
品質「低」 | 607 | |||
FUSION IP-Phone SMART | 479 | |||
3G | 050plus | 491 | ||
G-Call050 | 品質「高」 | 498 | ||
品質「低」 | 522 | |||
FUSION IP-Phone SMART | 483 |
<各サービスの考察>
意外と知られていませんが、携帯電話でも音声は遅延します。しかし、この程度の遅延時間ですと会話に支障はでません。
参考ですが、遅延時間が150ms以内は良好な通話が可能で(クラスB)、100ms以内では固定電話並み(クラスA)と言われています。
一般的には200ms以内が良好な通話が可能と言われているようです。
今回の検証で携帯電話は212ms遅延しています。しかし携帯で電話しているときに遅延を感じたことなどないと思います。
212msという数字はそんなものです。この程度ではまず支障がありません。
携帯電話での通話は、誰もが経験していることでしょうから、「基準」として捉えやすいと思います。
さて、全体に言えることですが、3G(LTE含む)回線は光回線に比べて100~200ms程度遅延時間が多いです。
これは、3G回線では光回線との応答速度(Ping)の差分が、そのまま全体の遅延の増加につながっているためです。
音声データが電話会社にたどり着く前に遅延しているのですから、これは仕方のないことです。
一般的に遅延時間は400msがボーダーと言われています。これから考えると「すべてがアウト」です。
しかし、実際に使ってみるとそんなことはなく、案外気にせず使えるものです。
これに関しては実際に使ってみるしかなく、言葉ではなんとも言えません。
<各サービスの特徴>
【ドコモ携帯】
言うまでもなく普通です。
聴き比べるとケータイって結構音質落ちるんだな、とわかります。
【050plus】
携帯に比べ、更にこもった音質になります。
これは使われている音声コーデック(G.729a)のためです。
このコーデックは若干音がこもりますが、低速回線でも良好な通話が可能と言われています。
『録音データを聴き比べる時のポイント』
光:携帯に比べると若干こもる。いかし人の声は聞き取りやすい。
LTE:「失敗しても」の部分にG.729aの特徴を感じる。
3G:光と同じ。
【G-Call050】
050plusより音が良く、人の声も聞き取りやすいです。
音声コーデックに何が使われているか知りたかったのですが、G-Callは教えてくれませんでした。
これがわかると、音質の特徴や得手・不得手もわかりやすいのですが、仕方ありません。
私の感覚ですが、Skypeの音声コーデックで有名な「SILK」か、とも思いましたが、事実はわかりません。
光と3Gで音質に差が出ていることから、可変ビットレートであることは確かです。
なお「050plus」よりも、更に低速回線に強いと言われています。
『録音データを聴き比べる時のポイント』
光:050plusより音質が良くて聞き取りやすい。
LTE:出だしの「医療技術の向上」の部分、「ぎ」が聞こえない、しかしつなげ方は自然。
3G:光に比べると若干こもる。しかし3Gでさえも、光の050plusよりも音質は良好。
【FUSION IP-Phone SMART】
びっくりするぐらい音質が良いです。携帯より断然音がいいです・・・。BGMも忠実に再現されています。
これもまた音声コーデック(G.711u)の特徴になります。
G.711uは、データ容量を犠牲(増加)にして音質を最大限に上げたものです。
これは固定電話(ISDN)の音声コーデックと同じもので、安定した固定回線であれば確かに最強です。
しかし、3G回線のような不安定な回線では実用的ではないと言われています。
今回のテストでは3G回線においても、安定した速度が出ており良好でした。
『録音データを聴き比べる時のポイント』
光:非常に明瞭で聞き取りやすい。携帯より音がいい。
LTE:出だし「・・・目覚しい現在の中でも」の「なか」がおかしい。他もおかしいところあり。
3G:文句なし。
<人による検証>
今回の検証では資料化できなかったテストがあります。
それは人の感覚です。
テスターは私の妻と母です。今までの録音装置に比べると頼りないですがご容赦を…。
(母の意見は参考になります。妻の意見は……。)
別に普通だよ。なんとなく音が遠いような、こもってるような気もするね。
これで料金が安くなるのならいいんじゃない?
(エコーについては下のG-Call050参照)
さっきの(050plus)より随分と音がいいね。すごくはっきり聞こえる。
エコーはさっきのもコレも、すこーしだけはあるみたいね。ほとんどわかんないぐらいだよ。
ただ、うちの電話って誰と話してもエコーするんだよね。
(結局エコーについてはIP電話のせいか電話機のせいかわからず。)
声がすっごい遅れて聞こえる!(同じ部屋でテストしているため、私の声も同時に聞こえている。)
音はキレイだよ。遅れてるけど。
(その後はケータイを手には持っていましたが、向い合って肉声で会話する妻でした…。)
<まとめ>
各サービスで特徴が色濃く出ており、おもしろいです。
これから言うことは主観です。現時点で自分が思っていることをまとめます。
まず「FUSION IP-Phone SMART」の選択肢はありません。
なぜか?
これを使うぐらいであれば、安定した「G-Call」(050ではない)を使って電話します。
FUSION:16.8円/分
G-Call:20.0円/分
(今回検証すらしなかった「BlueSIPフォン 050」も同様の理由です。[21円/分])
<通話料を半額にする呪文「0063」>参照
IP電話としては「G-Call050」と「050plus」の2択に絞られます。
両者とも非常に良好なサービスなのですが、選ぶポイントはこのようになるかと思います。
【G-Call050】
【050plus】
(G-Call050はセンターに電話をするタイプです。[無料])
それぞれ別記事で紹介していますので、そちらも合わせてご覧ください。
<スマホでIP電話「G-Call050」のすすめ>
<スマホでIP電話「050plus」のすすめ>
[追記]
同じような検証を各種VoIPサービス(LINE、Skype、Viber)でも行いました。
<スマホで無料通話「LINE/Skype/Viber」の音質比較>
<雑記>
この検証は疲れました。
夜な夜な録音をしては失敗を繰り返し、やっと記事の公開に至れました。
もともと通話料節約のために始めたこの検証ですが、その検証のために随分通話料がかかってしまいました。
まさしく本末転倒です。
まあ、私自身もすごく勉強になり、楽しかったので良しとします。
以上で各社の音声比較を終わります。
ここまで読んでくださった方がいましたら、長々とお付き合いいただきありがとうございました!
    
wert さま
返信削除すばらしい検証ですね!
この情報は(大袈裟に言えば)人類の財産になるものです!
GW、お忙しかったでしょうが、敬服します。
私は完全に子育て休暇になってしまいました。
何日かは自分の時間を持てるだろうと思っていましたが儚い夢でしたorz
結局、趣味の自作PCの調整もままならず、スマホも「ヒャッホーイ」まで到達できず…しかし、この休暇中に歩きはじめた子どもの成長のそばにいれたことは、よいことではありますが。
買い物の合間などに、wertさまの情報を元に、ドコモのキャンペーンを調べてみたり、イー・モバイルの解除料を確認したり、下地はつくれてきました。
また、ブログを拝見させていただきながら、ぼちぼち細部を詰めて楽しんでいこうと思います。
嬉しいコメントありがとうございます。
返信削除でも大袈裟です(笑)
こういうことって計画してるとワクワクしますよね。どんなことでも、楽しみながら行動することが成功のカギと思っています。なので、eisenさんも十分に楽しみながら吟味を続けてください(^_^)v
eisenさんと私は環境が似ているせいか、仰ることに非常に共感できます。
育児は大変ですがそれに勝る得るものがありますよね。男親でありながら子育てにここまで携われる現代に感謝です。
私も仕事のとき以外は、いつも子どもと一緒です。私が家に帰ると、妻は「開放された!」とばかりに育児放棄します(笑)
>趣味の自作PCの調整もままならず・・・
これまで一緒ですかΣ(゚д゚;)
私も半年前に買ったSSDが未だ取り付けられずお蔵入りしています。
PCの調整は中途半端には終われないため、連続した時間が欲しくなります。そうするとなかなか「やるか」に踏み切れないんですよね。
お互い、育児・趣味ともに頑張って行きましょう!
自作PCもされていたのですね。同じ事がいくつもあって面白いですね^^
削除ちなみに、「家に帰ると、妻は…育児放棄」も同じだったりします。
OSは(画面が少し写っていましたが)7でしょうか。私は思い切って8にしました。完全自作は今回が初めてでしたが、SSDに興味があったので、SSD一台の構成にして、消費電力や起動などの処理速度に、低予算の縛りを入れて工夫してみました。組んだところまでは良かったんですが、データの引越しや最初のチューニングの時間がとれないで、いまだに前のパソコンを使っています…。
自分はけっこう、そういう空白期間というか、(お蔵入り状態であることが)ある意味ムダというかをしない方だと思っていのですが、子どもがいると性格も変わるということでしょうか。思いもよらないことでしたが、ボチボチやるということを身につけているところです。
wertさんのおっしゃるとおり、子育てに男が関与できる時代に感謝!ですね。
娘を、抱っこ紐に入れてお出かけする、なんてことができるんですから。
はい、OSはWin7です。8は見送ります。
削除8のスタートメニューは賛否あると思うのですが、私は否の方でして…。(eisenさん購入しているのに申し訳ありません。)
折角のWindowsなので、Windowsらしく使いたいなと思っています。
SSDはPC全体の動作が劇的に速くなりますよ。
と言いつつ、私もデータの引越しが億劫で先延ばしにしているのですが(^_^;)
eisenさんの良いパパぶりが目に浮かびます。
どうしても“自分に対する優先順位”は低くなってしまいますが、その分、それ以外を大事にしているわけで・・・。
うまく言えませんが「ボチボチ」やって行きましょう!
素晴らしい!!! Σ(゚Д゚)
返信削除非情に読みやすくて大変、為になりました!
こんな完璧な検証比較サイト他では見たことないです(;´∀`)
某社のMVNO通信サービスを利用しているので、
通話環境構築の際、参考にさせて頂きます!
うれしいコメントありがとうございます。
削除某社・・・DTIとみました!
私はこのMVNOだけは別格だと思っています。
劣悪で激安です。こう言うのかなり好きです(笑)
某社での環境構築に成功したら、ぜひ教えてくださいね!